はじめに&皆さんにお願い。

ポルシェ356を購入するにあたり自分のコンセプトにあった車を買うというのは実に難しい事です。また、プロの査定士の中でも不都合が見つけられなく購入後痛い目にあったというのは多くの方が経験されております。

ここでは、購入する時にどのようなことを知っておかなければならないか?どのように選ぶべきか、など私の勝手な意見でまとめさせていただきました。

当方の所有する多くのレストアの写真などは当方の車両ではないために掲載できません。これを読まれた方で不都合箇所やレストアの写真など参考になりそうな写真がありましたら提供いただけると嬉しく思います。今後も編集していくと共に、写真等をいれていきたいと思います。少しでも車両購入の役に立てれば幸いです。

渡辺 最終編集2007年11月19日



ステップ1 購入する前に知らなければならない事


-あなたの欲しい車種は?

50年たった今、ポルシェ356は1つの美術品として扱われ、車両部品一つ一つが骨董品でありそれらを購入するのには信じられないほどの金額を払わなければならない時もあります。

何が欲しいかわからないまま車を探す事は時間の無駄や車選びに失敗する原因です。まず始めに何が欲しいか、自分にはどの車種が一番理想の356か知ることが大切です。ポルシェ356のモデル下記のとおりです。

356(1948〜1951年)
356PreA(1950〜1955年)
356A(1955〜1959年)
356B(1959〜1963年)
356C(1963〜1965年)

さて、モデル選びをするときに皆さんいろいろな理由で選ばれると思います。その理由は、自分の気持ちが大切であり他の人が何と言おうと気にする事はありません。どうしてもPreAにあこがれている、手放す時に価値が下がりづらいものが欲しい、Cの最終型が一番維持費がかからなそうで、どうしても最終型に近いモデルが欲しい。一番相場が安い車が欲しい。など、人から言わせればそんなの、邪道だ、間違いだ!といわれそうな事もあるでしょう。

ただ、言えることはきちっと整備された356はどれも壊れににくいというのが多くのメカニックの方々の意見でありますし、状態のいいものはどのモデルでも手放す時に、悪いものに比べて売りやすいです。人気のある車種でも状態が良くなければ、そう簡単には購入者は見つかりません。

356PreA、AモデルはB/Cに比べて生産台数が少ないこともあり、状態の良い車を見つけるのは簡単なことではありません。また、販売価格は車の状態やオリジナリティーに左右され、特にPreAでは車検の通る状態の車でも価格幅は400万円〜1600万円(ドイツでですが)もあります。

また部品の供給もPreA、AはB/Cに比べるとポルシェAGからの供給が少なく、廃盤部品を探す場合、海外に問い合わせる覚悟が必要です。

どうしても、PreAやAを購入希望の方は各部品が状態が良いかを知ることと、車の価値が気になる人は、その車にどの程度オリジナルのものが組み込まれているかを知ることがとても大切です。

それらの事は、初心者では非常に難しくプロの手、又は車を所有されているオーナーの人に相談したり、一緒に探してもらう事が一番良い事でもあります。


-どのような状態の車が欲しいか?

同車種で700万円の車が4台並んでいたら、車の状態も実に 千差万別です。車種が決まったら、どのような状態の車を購入するか?を自分で知る必要があります。

フルオリジナル(ポルシェ社から出荷してから今日まで当時の状況が保たれているものは価値のある物です。ただ、ボディーなど近いうちにいろいろ手がかかる可能性があります。その費用は、とてもびっくりさせられるものであったリもします。

レストア済みの車を買うということは、車としては健康であることが多いいですが、マニアの方の中では価値の失われるレストアという物もあります。レストアというのは、当時の状態に戻すことに意味があるというのが一般的で、素材の違うものを使用したり、サイズが違っていたりすると価値が下がったりしますし、安っぽいレストアは結局車の総合評価を下げる事になります。見えないところだからと言って節約しても無駄です。ポルシェスペシャリストは触らなくても中の様子がわかると思っていただいて構いません。

現在のテクニックを用いてされた良いレストア(世の中にはそれはレストアとは言わない!という人もいるとは思いますが)は、356が今まで生きてきたよりも2倍程度の寿命を持つといいます。

という事で、レストアベース車両を買って、レストアをするというのも決して悪い選択ではありません。簡単に言ってしまえばいずれにせよ、どの状態の車を買っても最終的にはお金はかかります。そのお金を何処で出すか?が問題です。購入時に相場を越えたすばらしい車を買うか、状態がまあまあのものを、毎年お金をかけて直していくか?ボロボロの車をお金かけてレストアするかは、皆さんの考え方次第です。
レストアベースを購入する場合に気をつけることは、部品がすべて揃っている事です。PreAやAを購入する時はこの点は必修ですし、B/Cを購入する時でも欠品があると思わぬ出費があります。あくまでも車も、部品も骨董品である事をお忘れなく。
得点アップの項目を書きます。以下の項目は査定時に有利となる事はもちろんのこと、希少価値が高いです。

トータルマッチングナンバー
これは、出荷時のままの状態でドアやフードに車台番号が打ち 込まれているホイールまでもが完全に一致しているもの

マッチングナンバー
これは、エンジン、ミッション、車体番号が出荷時と一致して いるもの。

レストア済み
これは、得点アップになりますが、ものによってレストア前の 方が価値があったというものもあるそうです。

ヒストリー書類
ねじ1本まで写真にとって あるようなレストア写真があるのは費用に情熱を感じます。 また、車両購入時の領収書、整備記録など、すべてそろっているものは金額的にはも しかするとあまりプラスにはならなくても、販売しやすく なることは間違いありません。

上記の項目はそうであったほうが、良いがマッチングナンバーといえどもそれらは決して車の状態が良いということを意味する事ではありません。ですので、健康な車を探しの方はこれらをあまり気にするより車の状態を気にするほうが優先です。また、売却時のことが気になる方は、せめてエンジン、ミッション、車台番号がマッチしている事はとても有利になります。


■ステップ2 車を探す、見学、査定


-車を探す。

クラシックカーの場合まず始めに車を探す前に頼りになる専門家または、車両をすでに所有している人を探す事をお勧めします。1人で車を探し購入するのは危険がかなり伴います。現行車両などを購入する時に奥様などを連れて行くと金銭面でストップがかかったり頭を冷やすためにとても良いと思いますが、クラシックカーは逆に連れて行ってはいけない人です。クラシックカーの価格は表に出ているものと中に入っているもの、すなわち購入後にしなければならない(見えない)修理代金がかかりますので、650万円と450万円と掲示している車両でも650万円の方がはるかにお買い得な事があります。また、小さなクラシックカーショップに在庫してある車が1台だけポルシェでそれがとてつもなく良い状態だったりすることもありますし、大型専門店であっても程度”良”の車を”最良”の値段で売っていることもあります。

-車を見つけて電話で聞く事。

電話する時に聞く事をあらかじめメモしておきましょう。 マッチングナンバーか?レストアはしてあるか?事故は?写真のドキュメントはあるか?ヒストリーなどなど、自分にとって購入のキーポイントになる事すべて聞きましょう。その中で、これだけは譲れないというものがあった場合は妥協せずに諦めましょう。また、遠い場所に車がある場合とりあえずいろいろな角度からの写真を送ってもらう事をお勧めします。その写真から参考書などを使って、各部品はオリジナルかどうか調べる事が大切であまりにも自分の理想と違う場合は(オリジナリティーなど)、見に行く必要がないことが写真で判明する事もあります。参考書としてTHE356PORSCHE(DR.B.JOHNSON著者)ISBN0-929758-16-1をお勧めします。

-見学するときの注意&鉄則

大切な事は、工場にあるようなリフトで車の下を見せてもらうことです。
これをしてもらえないのでしたら、車を見ないで帰っても良いというぐらい大切な事です。

見学の際も電話する時と同様にやはり、注意項目を事前にメモをしておきましょう。
せっかく見に行って後で見忘れた箇所を思い出しても後の祭りです。
各部のチリはどうでしょうか?塗装の具合は?錆の浮きは?座席シートの下のカーペットをはずして、床の状態を見ましたか?各部電気系は正常に動きますか?計器類は動きますか?アイドリングは安定していますか?ミッションはスムーズですか?異臭はしませんか?ブレーキはきちんと効きますか?リザーブタイヤをはずして、バッテリー下の床は綺麗でしょうか?オリジナルでしょうか?などなど、これらはほんの一部ですし、まだまだ大切な箇所はあります。すべて暗記して車を見れるのは日ごろから356の査定、買い付けをしている人のみです。念願の車を前にすると舞い上がってしまい精神状態が通常の状態と変わってしまい冷静な判断ができなくなってしまいます。ですので、ゆっくりと時間をかけて各部分を見ていくことをお勧めします。また、参考書などを持参して各部を照らし合わせる事も良い事でしょう。

見学時に持参するものとして、デジタルカメラ、紙、ボールペン、ライト等は最低限持って行きましょう。そして、自分ではわからないような箇所があった場合や不都合箇所を写真に撮り、信頼できるメカニックの方に意見を求めると良いでしょう。また、修理が必要な場合修理代がいくらぐらいかかるか目安を聞く為にも写真を撮ることをお勧めします。(写真だけではわからない事が多いいですが)

-レストア

とは元の状態に戻す=当時の状態に戻す、という事みたいです。
全世界でクラシックカーの販売に良く使われるフルレストア済み。販売者さん辞書をもう一度読まれたほうがいいのではと思う車が多くありますね。そんなきついこといわなくても。。。。そうですね。とりあえず、当時の方式でボディーを溶接し、NOS(当時の新品部品)や純正品を多く利用して全体的に手を入れ仕上げられた新品のような車、もフルレストア済みというのもOKとしましょう。それでもフルレストア済みといえない車。それではフルレストアのフルを取ってレストア済みとランクを下げて見ましょう。レストア済みという車はさびを隠しパテを大量に使いボディーが変形し、膨らみがなく微妙に原形をとどめていないが、表面を新車のような車に仕上げる。と言ったらかなり意地悪なのですがそのようなものが正直に多いいです。
良いレストアとは、修復箇所がドキュメント(写真、書類)などの上のみでわかるもので車を見てわかってはいけない

では、車を買うときにどのように判断したら良いか。素人、経験不足の人にとってプロのような判断は、鑑定は難しいもの。その時に一番の決め手はフルレストアのドキュメントを見せてもらう。私の見てきた車でフルレストア済みと書いてあって本当に極上のものは必ず膨大なレストアの写真存在しました。それはレストア前(そんなにボロボロではないのに)の状態から最終段階まで、ネジを1本つけたら写真撮影をしてといったらかなり大げさですが、まあ良くこんなに写真撮りましたね〜といつも話しかけています。これらは今後のレストア依頼者への各過程の紹介にもなりますし、レストア依頼者への当然のサービスでもあるかと思います。逆の立場から見ればレストアを依頼する場合、その過程を見せてもらいどのようなポリシーを持ってやっているのか聞き、各過程の写真を必ず撮ってもらいましょう。また、これは事故を起こして修理する場合も同じ事がいえます。

-委託販売タイプ

個人が車を販売したい場合。個人で雑誌などに宣伝を載せ車売ります!と宣伝するよりも有名店、専門店、大型店で委託販売をするほうが効果的です。その際出展するお店で値段設定を依頼者すなわちオーナーができるというパターンがドイツでは普通です。では、そのような、個人売買や委託販売車を買うときに気をつけることとはどのようなことでしょう。

まず、依頼者(現オーナー)は車に愛情があります。この愛情までもが金額に移ってしまうのです。購入時に大金を払ったオーナーは、大金を払った=最高の状態の車と勘違いします。それから、部品、再塗装、内装のレストアなど、いい加減なレストアをされた事に気が付かず大金をかけてレストアしたから最高の車と思ってしまう人も、同様です。 どこの本を読んでも同じ事が書いてありますがレストアをしてそれにかかったお金を取り戻す事はできないですし、レストアの仕方によっては価値の向上にならないものもあるのです。

-個人売買タイプ

個人売買は比較的安く購入できる事が多いいです。、ただショップと違い、1台売れればそれで終わりですので、その後の評判などを考える必要がありません。 個人売買で購入する際、信頼できる人から買うのが好ましいですが、見も知らぬ人から買う場合とにかく車をリフレッシュ(O/Hなど)をすることを覚悟した上で買うのが良いでしょう。

ただ、同じ個人売買といえども普段日ごろから御付き合いをしている車仲間で356を売りたいという人がいた場合は一番お勧めできるタイプの購入の仕方です。それは、全オーナーが誰だかわかっている、車がどのような扱いをされてきたかわかっている、今まで車の生き方を見てきた、というのはとても安心できる事です。ですので、356に乗っているオーナーとコンタクトを取るという事はいろいろな面で有利になるということです。




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